MBAより大切なもの──愛と共感がキャリアを切り拓く理由

『ラブ・イズ・ザ・キラー・アプリ』(2003年)は、変化の激しい時代にキャリアで成功するためのガイドブックです。その秘訣は「愛」と「思いやり」。本書の要約では、ビジネスにおける愛が、知性、寛大さ、共感力を引き出し、人生と仕事の目標達成をいかに支えるかを解説します。

愛と共感こそが、現代ビジネスを制する鍵。

「ビジネス」や「ビジネスマン」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。高額報酬のCEO、金にがめつい重役、魂を削るようなオフィス…いまだにネガティブな印象を持つ人は少なくありません。

それも無理はありません。かつてビジネス界は、冷酷な競争と「勝者がすべてを手にする」という哲学が支配していました。しかし、この要約でお伝えするように、そんな時代はすでに終わりました。

思いやりをもち、同僚と誠実に向き合い、より人間らしい職場をつくることが、いまや成功の鍵です。つまり、ビジネスに「愛」を取り戻すことが重要なのです。では、具体的にどうすればいいのか。それをこれから明かしていきます。

この要約で学べること:

  • MBAだけではもう通用しない理由
  • インテルがいかにして「チップ」を魅力的にしたのか
  • より良い職場をつくる秘密は「思いやり」にある理由

現代の仕事市場で成功するには「キラーアプリ」=「愛」が必要だ。

愛は素晴らしい感情です。ならば、それを仕事の場に持ち込まない手はありません。奇妙に聞こえるかもしれませんが、もはやアイビーリーグの学歴だけでは望む仕事を得られない今、愛はとりわけ重要です。

かつては一流大学の華やかな学位が生涯のキャリアを約束し、仕事で学ぶ知識があれば十分でした。しかし時代は変わり、シリコンバレーのような人材集積地では、経験や出身校ではなく「何を知っているか」で報酬が決まります。

では、明日の職場で成功を手にする「切符」とは何でしょう?

キラーアプリとは、周囲を一変させる画期的なアイデアのこと。そして現代のキラーアプリこそが「愛」です。

ただし、感傷的あるいは肉体的な愛ではありません。ビジネスにおける愛とは、自分が持つ3つの無形資産──知識、ネットワーク、そして思いやり──を惜しみなく提供することです。第一の知識は、学校や仕事、独学で得た、そしてこれから得るすべての情報です。

第二のネットワークは、人間関係と協力者の輪です。ネットワークは成功の土台です。それがなければ、知識を活かすこともできません。

最後の思いやりは、周囲の人々に寄り添い、成長を支える温かい心のこと。人の「感情」は、その人の「考え」よりはるかに大きな影響を与えるからです。

この3つの資産はあまりに重要で、情熱的な成功者の多くはすでに実践しています。彼らはラブキャット(lovecat)と呼ばれ、昨日までの愛なき経済と、略奪的マーケティングや先行者利益、市場シェア奪取といった攻撃的な言葉を捨て去った人たちです。

たとえばシスコシステムズの成功指標は、競合に勝つことではなく、顧客との関係の質。実際、営業担当者のボーナスは、売上高ではなく主に顧客満足度で決まるのです。

ラブキャットになることは「愛」を放つこと。

では、ラブキャットになることがなぜ成功のカギなのか。そこには6つのメリットがあります。

第一に、優れたブランドを築けること。マイケル・ジョーダンやiPhone、CNNのように、人々は確固たるブランドを信頼し、好意を抱きます。ブランドを持たなければ、あなたは単なる「自動化されていない仕事をしている人」に見えてしまう。群衆から抜け出すためにブランドは必須です。

第二の利点は、体験を生み出す力。顧客の忠誠心を勝ち取り、高い価格を正当化するには、単なるサービス提供では足りません。興味と楽しさを引き出さなければならないのです。たとえばインテルは、実際には退屈なチップビジネスに楽しげなイメージをまとわせました。

そして、経験価値が活きるのは製品だけではありません。人も同じです。だからこそ、仲間の記憶に残る「体験」を生み出すことが不可欠です。

第三は、人々の注目。いまや最も希少な資源です。

第四に、「ポジティブな推定」の力を放てるようになります。人は変化を怖がるもの。だからこそラブキャットとして信頼を得ることが重要です。あなたの提案が信頼されれば、どんな議論や変革も容易に進められます。

第五のメリットは、格別なフィードバック。これは単純な話で、金銭以上の価値を提供すれば、相手からもより多くのものが返ってくるのです。ビジネスのヒント、求人情報、アイデア、人脈など、さまざまな形で。

そして最後は個人の充実感です。仕事に幸せを感じられなければ、人生全体の幸福もおぼつきません。ビジネスに愛を注げば、本物の満足感が得られるでしょう。

知識がキャリアを次の次元に引き上げる。

廊下で同僚にハイタッチを配り、愛想笑いを振りまく人を見かけたことはありませんか? 一時的な人気者にはなれても、提供できるのは数回のジョーク程度で、むしろ周囲の時間を奪っているだけ。そんな「あの人」になってはいけません。

代わりに「知識のある人」を目指しましょう。それがキャリアを前進させるのです。仕組みは簡単で、他人に共有できるだけの知識を身につければいい。知識は力強く、結果をもたらすからです。知識を差し出せることが、キャリアの優位を生み出します。

雑談でリアリティ番組の話を延々とするよりも、クレイトン・M・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』で学んだ破壊的技術について語ってみてください。その違いは明らかです。

では、どうすれば知識を蓄えられるのでしょうか?

最善の方法は本を読むことです。今日の出来事を追うだけのニュースや、煩わしい広告で溢れた商業的な雑誌記事にうつつを抜かしてはいけません。本に没頭すれば、自分の視点を揺さぶる深い理解が得られます。もちろん雑誌や記事にも一定の価値はあるので、時間配分は読書80%、その他20%程度にしましょう。

読む本の選び方は、自分の分野で最高を目指すための適切な内容を選ぶこと。銀行員を志すなら、投資戦略の名著を読む。そうすれば、どんな会議でも価値ある発言で目立てるでしょう。

知識が重要だと理解したところで、次はその知識を活かすための具体的な方法を学びましょう。

知識を味方につける実践法。

知識を蓄えるには、自分に最適な学びの環境を見つけ、いくつかのステップを踏むだけです。読書に最適な「スイートスポット」を見つければ、時間投資の効率は格段に上がります。飛行機の中、公園、あるいは自分のベッドかもしれません。車通勤をやめて、電車で1時間の読書タイムを確保する手もあります。

次に空港でフライトを待つとき、周囲の乗客と同じようにスマホをぼんやり眺め、時代遅れに近づくのはやめましょう。本を手に取ってください!

お気に入りの読書場所が見つかったら、知識の蓄積と共有のための3つのステップに進みましょう。

最初のステップはエンコード(符号化)。つまり、内容を消化するために能動的に読むことです。読みながら常に書き込むのが良い方法です。実際、一文に線を引く動作がゆっくりなら、その文を自然と読み返すため、記憶に定着しやすくなります。

第二は処理。マークした部分をきちんと吸収できたか確認する段階です。章ごとに要点を振り返れば理解が深まります。週に一度、過去に読んだ本を1〜2冊見直す習慣も効果的です。

最後のステップは応用。新たに得た知識を職場で共有する時間です。まずは議論をイメージし、何を共有するか明確にしましょう。本を閉じたあと、頭の中で要点をまとめてみてください。

たとえば、デール・カーネギーの名著『人を動かす』を読み終えたとします。これであなたは、困難な状況でも好かれる人でいるためのアドバイスができるようになりました。会話の中で、相手が問題を打ち明けたり、質問や懸念を示したときが、知識を提供する絶好のチャンスです。

強固なネットワークは強力な資産。

空港のロビーで、連続出張に疲れ果てたビジネスパーソンが一人きりで佇む光景を、誰もが見たことがあるでしょう。こうした世界では、人と人との親密なつながりが欠けています。キャリアに集中するほど孤独を感じ、気持ちを共有したり支えを求められる相手がいないと感じるのも無理はありません。

しかし、それは変えられます。

ビジネスパーソンは個人的なためらいから人間関係を築くのを避けることがあります。けれど、潜在的なビジネスパートナーに声をかけるリスクは、まったくの見知らぬ人をデートに誘うよりはるかに低いものです。

何しろビジネスに携わる人たちは、投資家やパートナー、社員を求めているか、競合や最新トレンドを追っているのですから、もともと人脈を広げたいと思っているのです。

だから、拒絶を恐れる必要はありません。ひとつの新しい関係がさらなるつながりを生み、ネットワークを拡げる可能性を考えれば、その価値は明白です。

新しい人脈が増えれば、危機や好機の際に連絡できる相手が増えるということ。友人の推薦で仕事を得る人がどれだけ多いか想像してみてください。

ネットワークは自信も育てます。パーティー会場に着いて、知り合いばかりだったときの心強さを覚えていますか? 強力なネットワークは、同じような安心感をもたらしてくれるのです。

なかには、あなたの人脈を利用するだけで感謝一つ示さない人もいるかもしれません。でも気にしないでください。大事なのは、その紹介があなたに何の損失ももたらさなかったということです。得るものがなくても、失うものもない。あなたはビジネス愛を広める仕事をしているのですから、「貸し」を言葉にしないことです。

ネットワークを築き、共有するには賢い仕組みが必要。

ここまでで、良質なネットワークの重要性はわかりました。では、どう築けばいいのでしょう? 第一歩は「コレクター」になることです。

コレクターは、簡単な名簿管理システムで人脈を最適化します。たとえば、連絡先を「同僚」「顧客」「見込み客」「家族」「友人」の5グループに分けるといいでしょう。

また、常に名刺を持ち歩き、交換し、受け取った名刺はすべて専用の場所に保管します。

コレクターとしての次の段階はインプット段階です。

コレクターは絶えず人脈づくりに取り組み、すべてを記録します。出会ったあとは、一見どうでもよく思える弱いつながりの情報を忘れずにメモしておきましょう。趣味や好きなスポーツチームなど、次回の会話のきっかけになるものです。そして、必ず新しい相手に「お会いできて光栄でした」とメールを送りましょう。

第二のステップは「人をつなぐ」こと。ただし、無作為に引き合わせて時間を無駄にしないように。相手の「価値」──何をし、何を提供し、何を必要としているか──に焦点を当てましょう。たとえば、財務ディレクターを急に失った知人に、ぴったりの人材を紹介するイメージです。

スピードも重要です。候補を考えるのに一週間もかけていたら、「この人、本当は何を企んでいるんだ?」と疑念を招きかねません。

コネクションを作ったら、一歩引いて、関係が自走し始めるまでだけ関与しましょう。口出しの多い仲介者は摩擦を生む厄介者です。さっと身を引き、その旨を相手に伝えることで、見返りを求めずに相手の成功を応援する姿勢が明確になります。

職場の思いやりがすべてを変える。

職場での親密さに抵抗を感じる人は多いものですが、知識とネットワークだけでは人の心をつかみ、ビジネスを勝ち取ることはできません。思いやりこそが、ビジネス界の新たな成功の鍵なのです。

心配はいりません。思いやりや親近感は怖いものではありません。オフィスで「ハグおじさん」と煙たがられたくはないでしょうが、知識と強力なネットワークで信頼をあらかじめ築いておけば、思いやりは最後の「飾りのチェリー」として自然に映ります。

実際、思いやりは職場に決定的な影響を与えます。人間性を奪うような小部屋に子どもを通わせたいと思いますか? 思いませんよね。大人の職場も同じです。人のぬくもりを軽視し、身体的接触さえタブー視される冷たい環境に、思いやりは温かさをもたらし、人々の見方を一変させます。

思いやりを示すことで、あなたは数少ない「人に心地よさを届ける人」になれます。ちょっとした笑顔ひとつで、部署全体の一日が明るくなることだってあるのです。そして思いやりは伝染し、ビジネスパートナーとの体験もより良いものに変わります。

それだけでなく、思いやりはあなたが生み出す「経験」をより記憶に残るものにします。「こちらにサインを」「ありがとうございます、お客様」では印象に残らないからです。むしろ「あなた最高だよ、ロックスターだね!」と言ってみてはいかがでしょう。

気に入られようと、便宜を図ったり、取引や施しで相手の欲望を満たすのは、長続きしません。もっと持続可能な戦略は、心のこもった言葉で相手を気遣うこと。それは誰もが忘れられない、強力な行為なのです。

注意力と練習で「思いやり」を鍛える。

思いやりこそが成功への切符なら、どう育てればいいのでしょう。発声練習で声域が広がるように、思いやりも練習によって他人のニーズを感じ取る力が高まります。

まずは感覚のアンテナを磨きましょう。ボディランゲージを観察し、誰かが部屋に入ってきたときに同僚がどう反応するかを見てください。肩を軽く叩く小さなジェスチャーか、それとも大きなハグか。

同僚を観察するうちに、すぐに心を開ける人とそうでない人がいることに気づくでしょう。

次に重要なのはタイミング。絆を深めるのに適した瞬間を知らせる合図に耳を澄ませてください。

これで感情表現の準備が整いました。視線、言葉、仕草など、さまざまな表現方法があります。たとえば、真に目を合わせることを意識したり、挨拶や会話のときに笑顔になるよう自分を訓練しましょう。作り笑いは無表情より悪いので注意です。

温かい言葉を使うのもコツです。「よくやった」よりも「あなたの仕事に心から感謝しています」と言い換えてみてください。最後に、良いハグでポジティブなエネルギーを伝え、握手は相手のスタイルに合わせて完璧なものに仕上げましょう。

表現の仕方がわかったら、あとは適切な機会を見つけるだけです。たとえば、挨拶は絶好のチャンス。人に会うたび、別れるたびに自分を表現できます。デール・カーネギーの助言を実践し、相手の名前を呼び、心地よい気分にさせてあげましょう。

万が一、拒絶されても、必死に取り繕おうとしないでください。正しいタイミングを待ち、練習を続けましょう。やがて必ず上達し、拒絶は、同僚を喜びで輝かせた瞬間に比べれば、ほんの小さな代償に過ぎないと思えるようになります。

最終的なまとめ

この本の核心:

愛こそが21世紀のビジネス成功への道であり、その愛を広める秘訣がある。知識、ネットワーク、思いやりを惜しみなくビジネスパートナーや同僚に提供することで、あなたは愛を放ち、ポジティブな関係を築き、ふさわしい成功を手に入れられる。

実践的なアドバイス:

新しい人脈ごとに具体的なメモを取り、次回の再会に備える。

ネットワークを築くときは具体性が命です。素晴らしい会話をして名刺をもらったとしても、「X社でYを担当」といった一般的なメモでは不十分。相手のスキルや関心事を個人的に記録し、次に会ったときの会話の糸口にしましょう。たとえば、「ニューアーク行きの機内で隣に座ったタイラー・ダーデン。こちらがブランドリーダーシップの本を読んでいたら、彼の石鹸会社の話になり、実はボクシングにも凝っていることがわかった」といった具合です。

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