売上目標を手放した家電量販店が、株価3倍の奇跡を起こせた理由

The Heart of Business(2021年)は、家電量販店ベストバイの元CEO、ヒューバート・ジョリーが、より高い目的に焦点を当てた人間中心の文化を築くことで、同社を目覚ましい再建へと導いた経緯を語る一冊です。従業員を惹きつけ、顧客に尽くし、あらゆるステークホルダーに持続可能な価値を生み出す、価値主導型リーダーシップへの道筋を示しています。

この本から得られるもの:視点の転換

2012年、ヒューバート・ジョリーがベストバイのCEOに就任した当時、彼は沈みかけの船に乗り込んだかのように見えた。この家電量販店は、Amazonのようなネット通販大手との競争に苦心していた。売上と利益は減少し続け、度重なる人員削減の後、従業員の士気はどん底だった。多くの人は、この衰退を覆すことは不可能だと考えていた。

しかしジョリーは、わずか数年で劇的な逆転劇を演出した。売上を安定させ、従業員に活力を与え、株価を新たな高みへと押し上げたのである。彼は一体どうやってそれを成し遂げたのか?

本記事では、ビジネス文化と価値観の根本的な変化が、どのようにして流れを変え、崩壊寸前の企業を救ったのかを簡潔に探っていく。その鍵は、ジョリーが重視した「目的」「人」「利益」——この順番にある。

では、ジョリーのリーダーシップ哲学がどのように会社を軌道に戻したのかを見ていこう。

目的主導のビジネス

ジョリーがCEOとして最初に取り組んだことの一つは、ベストバイに存在意義を再考させることだった。お金を稼ぐこと以上に、企業は社会でどのような役割を果たせるのか? 熟考の末にたどり着いた答えが、「テクノロジーで人生を豊かにする」というものだった。

ジョリーはこのビジョンに沿って組織を再編した。各店舗には、地域社会のニーズを理解し、それに応える権限が与えられた。リーダーたちはみずから店舗を訪れてフィードバックを求めることで、その目的を体現した。この鼓舞するような目的意識は従業員の日々の仕事により深い意味を与え始め、ジョリーは研修と報酬を改善することで、従業員が大切にされていることを示した。

つまり、崇高な目的を追求することは、ジョリーにとって単なるスローガンではなかった。それは意思決定の指針となり、従業員に自分たちの仕事には確かな意味があることを思い出させた。人々が企業のより高い目的とつながりを感じるとき、彼らは新たな情熱を持って仕事に臨むようになる、とジョリーは気づいたのである。

ジョリー就任前のベストバイは、高圧的な営業手法と、売上目標の達成しか頭にない無関心な従業員で知られるようになっていた。顧客サービスは優先事項ではなかった。従業員は顧客の実際のニーズをほとんど考慮せず、高額な付属品やサービスを押し込んでいた。彼らの目標は、顧客一人ひとりの支出額を最大化することだった。

ジョリーが目的に再び光を当てたことで、そのメンタリティは変わった。彼は、ベストバイが人々の人生を豊かにできるのは、まず顧客のニーズを理解してからだと強調した。従業員は、耳を傾け、関係を築き、各顧客に合わせた解決策を提供するよう訓練された。不必要な追加販売をするのではなく、最初から顧客に合った商品やサービスを提案することを目指したのである。

売上目標よりも目的に集中したことで、ベストバイの店舗は一方的な販売の場から、相談型・関係構築型の場へと生まれ変わった。ただ売るだけでなく、時間をかけて話を聞き、専門知識を提供してくれるスタッフを顧客が評価し、再び足を運ぶようになったのだ。

人を中心に据える

ジョリーの下でベストバイが再建を遂げた第二の柱は、従業員をビジネスの中心に置いたことだ。

彼は、いくら鼓舞するような目的があっても、それを実行する人々を大切にしなければ不十分だと気づいた。ベストバイに着任した当時、長年にわたる人員削減とコストカットの影響で士気は低下していた。ジョリーは信頼の再構築を最優先課題とした。

彼はまず、耳を傾けることから始めた。懸念事項を聞くために、従業員による円卓会議を何十回も開催したのだ。このフィードバックに基づき、ジョリーは研修、キャリア開発、勤務体制、報酬を改善した。育児休暇制度の再設計は、ベストバイが仕事以外の従業員の生活も大切にしていることの表れだった。

従業員に権限を持たせるため、ジョリーは息苦しい官僚主義や階層構造を廃止した。意思決定権を現場のスタッフや店長に委譲したのである。本社のリーダーたちには、細かく管理するのではなく、障壁を取り除く役割が与えられた。

ジョリーはまた、従業員の声を届ける場も設けた。新設された「ピア・アドバイザリー・グループ」により、従業員は定期的にアイデアやフィードバックを共有できるようになった。毎年開催される「ベストバイ・サミット」には、あらゆる階層のリーダーが集まった。

ジョリーの人間中心の投資は報われた。基本的なニーズが満たされ、自分の声が尊重されているという実感を得た従業員は、再び仕事に積極的に関わるようになった。彼らは顧客サービスに新たな情熱と創意工夫をもたらしたのである。

人を信頼して権限を与えることで、ベストバイは自社最大の資産を引き出すことができた。

利益は目標ではなく、結果である

ジョリーのリーダーシップ哲学の背後にある第三の考え方は、利益を「目標」ではなく「結果」として捉えることだった。これはつまり、目的と人材は単なる戦略ではなく、最終的な判断基準として扱われたことを意味する。

従来、ベストバイは四半期ごとの売上や一株当たり利益など、短期的な財務指標を最大化するために意思決定を行ってきた。しかしジョリーは、利益を主要な目的にすべきではないと主張した。目的と人にまず集中すれば、利益は自然とついてくると信じていたのである。

ジョリーは、店舗や従業員を売上と利益率の目標だけで評価することをやめた。代わりに、顧客満足度と従業員エンゲージメントを追跡した。サービスを向上させる従業員研修などの取り組みに投資し、それがひいては収益につながると信じていた。

ウォール街のアナリストたちは、ジョリーの型破りな戦略に懐疑的だった。しかし彼は、懐疑論者が間違っていることを証明した。任期の終わりまでに、ベストバイの株価は3倍に上昇し、利益は過去最高を記録したのである。

利益を結果として捉えるアプローチは、どのように機能したのか? より深い目的意識に駆り立てられた従業員がより良いサービスを提供し、それが顧客ロイヤルティを高めた。ブランドを信頼する顧客は、その商品に高いお金を払ってくれる。活力を得た従業員は、業務をより効率的にする斬新なアイデアももたらした。

ジョリーは、目的と人のために正しいことを行うことが、財務上の成功と矛盾しないことを示した。企業が崇高な目的に応えるとき、消費者はそのビジネスを選ぶことで報いてくれる。従業員を大切にすれば、彼らは懸命な働きでそれに応えてくれる。ジョリーはベストバイの再建を通じて、目的と利益は両立し得ることを証明したのだ。

まとめ

ベストバイの奇跡的な回復は、ビジネスの成功と人間的な理想が対立する必要はないことの証明である。目的を最優先し、従業員を大切にし、販売よりもサービスに重きを置くことで、ヒューバート・ジョリーは誰もが共感できる原則によって、会社を瀬戸際から救い出した。

彼は、人に正しく向き合うことが、人生と収益の両方を豊かにすることを示した。彼の物語は、あなた自身のリーダーシップにも目的と人間性を取り入れるよう、静かに語りかけてくる。利益よりも大きな理想に根差した組織を築く勇気があるなら、人間の潜在能力をかつてない規模で引き出すことができるだろう。

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