成功のカギは「混沌の真ん中」にあり――起業家が知るべき困難期の乗り越え方

『メッシー・ミドル』(2018年)は、起業を着想から完成まで導く厳しい現実に迫る。順調に成功へ向かうおとぎ話を退け、スコット・ベルスキーはスタートアップの成功が実際に鍛えられる場所、つまり困難だが決定的な「中間ステージ」に光を当てる。

本書の要点:成功は混沌の真ん中で鍛えられる

最近は何億ドルもの評価額と世界征服を目指す勢いを伝えるスタートアップの成功話を聞かない日はない。だが、そうした華々しい話から本当に学べることはあるのだろうか? きらびやかなプレスリリースは真実を語っているのか、それとも聞きたい部分だけをきれいにした都合のいい話なのか。スタートアップの90%が市場に影響を与える前に潰れてしまう現実を考えると、最も成功した企業がどうやって今の地位を築いたのかを知ることは極めて重要だ。

自分自身でワクワクするような不確実なスタートアップの旅に出るとき、成功する側に食い込むにはどうすればいいのか? 多くの指南書は立ち上げか完了段階に焦点を当てるが、本当の成否を決めるのは、プロジェクトが走り出し初期資金を確保した後に待ち受ける浮き沈みを乗り切れるかどうかだ。つまり、スタートアップ成功の鍵は「混沌の真ん中」にあるのだ。読み進めると、次のようなことが分かる。

  • 長期的な達成に備えることがなぜか非生産的に感じられる理由
  • 壊れたものを直すより、うまくいっている部分を磨くべき理由
  • 自分のプロジェクトを「完成」と決して思ってはいけない理由

ビジネスの成功は、あらゆる事業の厳しい「中間」で鍛えられる

新しい事業を始めるのは、険しい旅に出るようなものだ。起業であれアートの分野であれ、飛び込もうとする人たちは似たような不安と希望を抱えている。しかし、何を創り出そうとも、必ず遭遇するのが混沌の真ん中だ。価値ある事業の中間地点は信じられないほど不安定で、まるでジェットコースターのような浮き沈みの連続。熱意もプロジェクトそのものも、予告なく膨らんだり縮んだりする。

初期の「ハネムーン期」――自分が何を知らないかすら自覚していない幸せな期間――を抜けると、多くの人は迷子になったように感じる。なぜか? 中間地点では、方向性を見つけて進歩し、またつまずいて道を見失うことの繰り返しだからだ。やるべきことは、低空飛行を耐え、高揚を楽しみながら、次の谷が前より浅く、次の山が前より高くなるよう押し続けることだ。渦中にいるときは下り坂と上り坂しか見えなくても、いずれは右上がりの中央線が完成へと向かっていることに気づけるはずだ。これが達成までの本当の旅路である。

信じられなければ、著者自身の道のりを考えてみてほしい。2006年にクリエイティブ業界のプロをつなぐオンラインプラットフォーム「Behance」を創業したスコット・ベルスキーは、数年にも及ぶ混沌の真ん中を経験した。その間、プロジェクト全体が崩壊寸前に見える時期もあった。従業員以外は誰もアイデアを理解せず、興味を示す者がいても疑いの声をぶつけるだけだった。この厳しい時期、ベルスキーは不安と自己不信に苛まれ、吐き気止めを飲んでどうにか食欲を保つという状態だった。多くの起業家はこの醜い時期を語りたがらないが、これが混沌の真ん中の現実なのだ。

自分でマイルストーンを設定し、必要な「短期的報酬」を得る

起業や創作に挑戦したことがある人なら、どんな成功事業にも膨大な時間とコミットメントが必要だと知っているだろう。小説を書くにせよスタートアップを立ち上げるにせよ、壁にぶつかるのは避けられない。さらに厄介なことに、成功への旅の途中では外部からの報酬はほとんどない。利益を得るどころか、お金が出ていくばかりだ。

顧客はまだつかず、事業の存在を知らせることすら一苦労。では、誰も努力を称えてくれず、大きな成果も遠い先に見えるときに、どうやってモチベーションを保てばいいのか? この問いは重要だ。人間は長期的な報酬より短期的な報酬を好む傾向がある。私たちは幼い頃から短期的報酬を追いかけるよう教えられる。子どもは勉強の成果として高い成績を取る。その成績は教師や級友、親からの称賛という報酬にもつながる。

この短期的報酬システムは大人になっても変わらない。従来の仕事に就けば、毎月の給与という短期的報酬が私たちを満足させる。ところが、起業や創作の現場では短期的報酬はほとんど得られない。だからこそ、自分たちの欲求を満たすには工夫が必要になる。まだ利益も顧客も得られなくても、自分で短期目標を設定し、達成したら自分を報いることはできる。ベルスキーが起業したときも、利益や外部からの評価を得られるまでに数年を要した。

そこで彼は、独自の短期目標と報酬の仕組みを作り上げた。たとえば、Google検索が「behance」を正式な検索語と認識せず、「enhance」に自動修正してしまうことに気づいたとき、ベルスキーはチーム目標を設定した。Googleが会社名を自動修正せず認識するようになることだ。チームがこのマイルストーンを達成したとき、彼は安いシャンパンでも構わず、徹底的に祝った。こうして、利益や顧客といった従来の成功指標がなくても、自分自身と従業員に達成感という報酬を与えたのだ。

成功のときも困難のときも、自己認識が不可欠だ

起業の旅では、成功と失敗の両方を経験し、それがプロジェクトに影響を及ぼす。しかしあまり意識されないのは、こうした両極端があなた自身にも大きな影響を与えるという点だ。そこで自己認識が欠かせなくなる。なぜか?

起業の浮き沈みが自分にどんな悪影響を及ぼし得るかを理解していれば、極限状態でもクリアな視点を保てるからだ。自己認識はまず、自分が谷底にいるときも頂点にいるときも、自分自身の最悪バージョンになりやすいと理解することから始まる。プロジェクトがうまくいっていると、しばしばエゴが顔を出す。これが意思決定力を鈍らせ、ひいては事業に悪影響を及ぼす。なぜか? 自分の意見だけが正しいと思い込み、良い助言や何かがおかしいという微妙なシグナルを受け入れにくくなるからだ。

つまり、過信に陥るのだ。逆に、状況が厳しくなると、今度は自分の不安に足をすくわれる。ストレスを感じると、私たちはしばしば脆弱さを抱える。その脆弱感を和らげようと、問題の責任を周囲に不当に押し付けて自信を保とうとする。他人を非難する方が自分を責めるより怖くないからだ。だからこそ、どん底にいても絶頂にいても、常に自己認識を保つ努力をしなければならない。

成功を掴むには、自分のプロジェクトを育てる際に他人のフィードバックや批判に耳を傾けるだけの十分な認識力も必要だ。著者の経験によれば、最も成功への潜在力がある創業者ほど、自社の強みや弱みについて耳の痛い真実を聞いても防衛的にならない。フィードバックに心を開き、良い提案を業務に取り入れられる創業者は、建設的な批判に敵対的な人よりもたいてい好業績を収める。しかも、優れた創業者は建設的な批判やフィードバックを自ら積極的に求めに行く。

彼らはフィードバックにただオープンなだけでなく、探しに出かけるのだ。もし自分がフィードバックを受けるとつい防衛的になってしまうと自覚しているなら、自己認識を働かせて方法を変えよう。他人の洞察をもっと受け入れるよう努め、誰かが助言をくれようとするたびに攻撃的になるのはやめよう。

将来の成功への準備は大切だが、そのときは生産的に感じにくい

人間の脳は原因と結果を見つけ、行動の短期的な結果を理解するのは得意だ。しかし連鎖反応を予測するのは苦手である。長期的な視点を持てないせいで、将来の達成や機会のための土台作りをおろそかにしてしまう。ビジネスで長期的ゲームを戦うには、時に通常の生産性の原則を無視する必要がある。

短期的な商談にはほとんど結びつかなくても、数年後に実りある協業を生むかもしれない強い人間関係を築くために、アイデアや道筋を探ることにかなりの時間を割くのだ。Uberなどの成功スタートアップを支えた投資家ビル・ガーリーは、短期的な利益を生む活動でスケジュールがぎっしり詰まっているにもかかわらず、将来のビジネスチャンスを徹底的に探ることで知られる。医療分野から運輸業界まで多様な業界の人々と関係を築きながら、彼は通常、異なるアイデアや関心を数カ月から何年も追求する。それが結局投資機会に結びつかなくても、彼はこの長期的な時間投資をまったく気にしない。なぜか? 彼は一度の取引を完了させる時計との競争だとは決して感じないからだ。

その代わり、彼は自分の専門分野に対して純粋な好奇心を持ち、自分が長期戦を戦っていることを理解し、ほとんどの人間関係が実を結ぶまでに時間がかかること――結局実らないことも含めて――を受け入れている。長期的ゲームを戦うには、現在のアイデアやプロジェクトがまだ有望でなくても、将来あなたのビジネスに大きな価値をもたらす可能性があると信じられる人々に時間、エネルギー、資金を投資する覚悟が必要だ。残念ながら、歴史には長期的な視野を持てなかったビジネスリーダーが溢れている。ネット動画配信の巨人Netflixは2000年に、まだ成功途上だった頃、ビデオレンタルチェーンのBlockbusterに身売りを持ちかけた。わずか5000万ドルという破格の値段だ。残念なことに、Blockbusterの幹部はこの買収の長期的可能性を検討しようとしなかった。

彼らは、インターネットの到来でビデオレンタル業界がいずれ実店舗から離れ、まず通信販売のサブスクリプション型に移行し、さらにオンラインへと進化するかもしれないと考えを巡らせなかった。今やNetflixの価値は1500億ドルに上り、Blockbusterは2010年に破産申請を行った。これは、大多数の人が長期的計画を立てる活動を重視していると言いながら、実際に忍耐強くその行動を取れる人はほとんどいないことを如実に示している。

うまくいっていることをさらに磨き、成功を最適化する

そう感じられないときもあるかもしれないが、混沌の真ん中は避けがたい低空飛行や逆風に耐えるだけの時期ではない。突破口を見つけるためには、旅の中での好機も活用してゴールに向かう加速に変えなければならない。そのためには、自社の中でうまく機能している部分を見極め、それをさらに伸ばす必要がある。つまり、最適化だ。

うまくいったこと――生産性を高める新しい習慣であれ、顧客に好評な製品へのひらめきの変更であれ――が見つかったら、その改善を徹底的に評価しよう。「なぜ成功したのか」「どう再現できるか」「この改善をどうチームに広げられるか」と自問するのだ。最適化は、常に「もっと良くできる」という信念から生まれる。壊れたところを直すよりも、既に機能している部分をさらに磨くことに重きを置く。Googleや現代のネット企業は、A/Bテストを通じてウェブ製品の最適化を先駆的に推し進めてきた。A/Bテストでは、オリジナル版(A)と変更版(B)の性能を比較することで、ウェブページやオンライン体験のあらゆる側面を改善する。

たとえばECサイトが、一部の訪問者にだけ購入ボタンの色を変えて表示する。もし変更版の方が購買率を高めれば、その色変更はサイト全体に適用される。そうでなければテストは破棄され、これまでのバージョンが使われ続ける。しかし結果にかかわらず、根底にある考え方は同じだ。たとえうまくいっているように見えても、常に改善を試みる価値があるということだ。重要なのは、A/Bテストはオンラインのボタンにしか使えないというわけではない点だ。働き方やチームの自己組織化の方法など、日常のあらゆる側面を最適化するために応用できる。

チームは会議の進め方を変えたり、集まる曜日や時間帯を変更したりできる。あるいは誰かが新しいアプリやツールを1カ月間試し、生産性が向上したかどうかを検証する。うまくいけば、その変更を恒久的なものにすればよい。

事業を「完成」と決して思わないことで、ビジネスの切れ味を保つ

ミスから学び、うまくいったことを最適化し続ければ、やがて混沌の真ん中を抜け、ゴールへと向かう。完了の地点は人によって違う――小説が出版されることかもしれないし、スタートアップを大企業に売却することかもしれない。しかし、中間段階から抜け出しつつあるときこそ、そこを乗り切らせてくれたマインドセットを失わないようにしたい。おもしろいことに、新しい事業を完成地点へと順調に進める唯一のマイナス面は、果敢に行動する気概に満ちた開発期を過ぎ去ってしまうことだ。

皮肉にも、あなたの前進を加速したのは、おそらくそうした大胆な行動だった。立ち上げ段階は、会社や事業が最も柔軟性に富む時期だ。まだ何も成し遂げていないから慢心もなく、むしろミスを恐れずリスクを取る姿勢がある。製品もまだ歩き始めたばかりで、大幅な変更にも耐えられる。だからこそ、毎朝新しい気づきやちょっとした微調整のアイデアが湧き、大きなインパクトを生むのだ。

しかし事業の後半に入っても、ここまで導いてくれた開放性、大胆さ、謙虚さを持ち続けるようにしたい。このマインドセットを巧みに維持している企業がFacebookだ。Facebook本社を歩けば、壁には「この旅はまだ1%終わったに過ぎない」と書かれたポスターやラップトップのステッカーを目にする。なぜか? この会社は常に、まだ混沌の真ん中にいるかのように振る舞うことを誇りにしているからだ。このマインドセットを保つことで、社員も経営陣も既存の前提に疑問を投げかけ、物事をより大きく、より良くする方法を絶えず考え続けている。

実際、2004年の創業以来どれほど変化してきたか考えてみてほしい。大学のディレクトリとして始まったサービスは、2008年までにソーシャルネットワークとして大成功を収めた。しかしそこで止まらなかった。代わりに、ユーザーが他のアプリやウェブサイトにアクセスできるプラットフォームへと進化し、今やオンラインコミュニティやグループが協働する場としても一目置かれる存在だ。Facebookは絶えず進化を続けており、従業員が「もうすぐゴールだ」と感じ、振る舞い始めたら、その前進は止まってしまうだろう。プロジェクトの中間は不確実性と逆風に満ちているが、同時に将来の成果を決定づける激しい創造性と最適化の時期でもある。だから混沌を受け入れ、その一部を少しだけ、どこへ向かうにせよ携えていくことを忘れないでほしい。

最終的なまとめ

本書の核心メッセージ:多くの人は、成功する起業の旅はアイデアから始まり、その後の懸命な努力を経て、徐々に右肩上がりの成功へと至るものだと教えられてきた。しかし、それは誤りだ。実際には、あらゆる事業の中間部分こそが常に最も困難であり、それを乗り越えるには、劇的な浮き沈みと外部からの評価不足に対処できなければならない。

さらに、自分なりの達成感を見つけ出し、成功で終えるために最適化を大量にこなす必要もある。容易ではないが、この混沌の真ん中をどう進むかを学べば、成功への大きな可能性を手にできる。 実践的なアドバイス:成功で終われなくても、潔く幕を引け。 プロジェクトは、当初の思い描いた通りに進むことはまずないし、目標通りの結果を生むものはさらに少ない。だが、事業の終盤で落胆しているときこそ、急いで物事を畳み、次のプロジェクトに飛びつきたい衝動に抵抗しよう。なぜなら、この最終局面こそが投資家や株主などとの信頼関係を守る鍵だからだ。こっそり姿を消し、失敗の責任を問うかもしれない相手との難しい会話を避けたくなるかもしれないが、将来の事業のために評判を損なわないためには、逆の行動を取るべきだ。だから、結果がどうであれ、その結果を自分のものとして受け入れ、ステークホルダーにきちんと説明し、潔く終えること。

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